メールマーケティングと特定電子メール法

プライベートのコミュニケーションではSNSが利用され、ビジネスでもSlackやChatwork、Microsoft Teamsなどのチャットツールが一般化しつつあります。そんななかでメールはもう古いと思われるかもしれませんが、デジタルマーケティングにおいてはむしろ「メールマーケティング」という新しい分野ができ、さまざまな手法が開発されています。

しかしメールでの営業というと、受ける側としては「勝手に送られてくるやつでしょ?迷惑メールとなにが違うの?」という悪い印象をもっている人も多いでしょうし、送る側としては「こんなメールを送って法的に問題ないのかな?」と不安に思う人もいるでしょう。

事実、総務省が定めている特定電子メール法は迷惑メールを規制するための法律で、違反すると処罰の対象となります。しかし営業目的のメールがすべて禁止されているわけではありません。メールマーケティングを行うときには、この特定電子メール法を正しく理解する必要があります。

メールマーケティングとは

メールマーケティングの種類

メールマーケティングには以下の種類があります。たくさんありますが、誰に、どのタイミングで、どういうメールを送るか、という組み合わせで種類が変わっているだけです。

  • ステップメール
  • リターゲティングメール
  • セグメントメール
  • 休眠発掘メール
  • メールマガジン

ステップメール

メールを送るためにはメールアドレスを取得しなければいけませんが、アドレスを取得したタイミングから段階的にメールを送るのがステップメールです。たとえばWebサイトで資料請求がされたときにサンキューメールを送り、3日後に商品情報のメールを送り、10日後にアンケートを送り、20日後にアンケートを送る、などの決められたステップでメールを送ります。数が多いと大変なので、普通はMAツールを利用します。

リターゲティングメール

ユーザーが行動したタイミングでメールを送るのがリターゲティングメールです。たとえば過去にアドレスを取得したユーザーが再びサイトを訪問し、特定の商品ページを見たときに、その商品についてのキャンペーン情報をメールで送る、という手法です。これもMAツールを使うと自動で行うことができます。

セグメントメール

ユーザーを属性や行動で分類してその集団ごとにメールを送るのがセグメントメールです。たとえば所在地の属性を使って東京のユーザーにだけ展示会の案内を送ったり、過去に資料請求をした人にだけキャンペーンの案内を送ったりします。なんらかのプロモーションを行うタイミングで、それにあったユーザーの属性や過去の行動からターゲットを絞り込む手法です。

休眠発掘メール

しばらくつながりのないユーザーにメールを送るのが休眠発掘メールです。新規で見込み顧客を見つけるよりは、すでに接点のあるユーザーに連絡を取るほうが効率的なのはいうまでもありません。また過去に検討してもらったときとは状況が変わっていることも考えられます。思い出してもらう、再検討してもらうことが目的となります。

メールマガジン

読み物の形式で定期的にメールを送るのがメールマガジンです。これはインターネット初期からある古典的な手法ですが、当初はマーケティングではなく、普通にマガジンとして個人が発行しているものがほとんどでした。そのうち企業が取引先への情報提供としてメールを使いはじめ、マーケティングとして定着したという経緯があります。プロモーションだけではなく、ユーザーの役に立つ情報を提供するのがコツです。

メールマーケティングの方法

メールマーケティングでもっとも重要なことは効果測定を行うことです。たんにメールを送るだけであればメールソフトを使ってBCCで一斉送信してもいいのですが、それだと効果測定ができません。メールの開封率、本文に書いてあるURLのクリック率、どのURLがクリックされたか、誰が開封して誰がしなかったのか、誰が何をクリックしたか、などがわかってはじめて次の手を打つことができます。これらの情報を知るためには、MAツールを使うか、メール配信ツールを使う必要があります。

メールアドレスの取得

そもそもメールマーケティングをするためには、あたりまえですがメールを送るためのアドレスを持っていなければいけません。ではそのメールアドレスはどのように取得するのか。これがデジタルマーケティングでいう「リードの獲得」(リードジェネレーション)です。オンラインではなくオフラインでも対面で名刺交換したときの情報もありますし、展示会で集めたものもあるでしょう。

  • 自社のWebサイトで取得(お問い合わせ、資料請求、ダウンロード)
  • 名刺交換で取得
  • 展示会で取得
  • メールアドレス業者から購入
  • ターゲット先のWebサイトに表示されているものを取得

これらの方法で取得したメールアドレスに対して、メールマーケティングをすることは法的に問題がないのでしょうか。そこで参照しなければいけないのが「特定電子メール法」です。

特定電子メール法とは

特定電子メール法の適用範囲と罰則

先述したように迷惑メールを規制するための法律が特定電子メール法で、2002年に成立・施行、2008年に改正されました。ここでいう「特定電子メール」とは営業を目的とした広告および宣伝として送られるものとされています。

電子メールの送信(国内にある電気通信設備(電気通信事業法第二条第二号に規定する電気通信設備をいう。以下同じ。)
からの送信又は国内にある電気通信設備への送信に限る。以下同じ。)をする者(営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人に限る。以下「送信者」という。)が自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信をする電子メールをいう。

引用元:総務省・消費者庁「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」

では「広告又は宣伝を行うための手段として送信をする電子メール」はどのようなものかというと、「ウェブサイトへ誘導することがその送信目的に含まれる電子メール」と書かれています。となると、メールマーケティングは基本的にWebサイトへと誘導するものなので、種類を問わず、すべてのメールマーケティングがこの特定電子メール法の適用範囲ということになります。

また違反すると罰則があります。違反した内容によって異なりますが、最高で「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」、法人の場合には「3000万円以下の罰金」と定められています。

特定電子メール法について詳しくは総務省と消費者庁が出しているガイドラインをご確認ください。

特定電子メール法のポイント

  1. オプトイン方式について
  2. 同意を証する記録の保存について
  3. 表示義務について
  4. 受信拒否について

オプトイン方式について

「オプトイン」は直訳すると「参加する」ですが、ここでは「事前の同意」を意味します。あらかじめ同意したユーザーに対してのみ広告宣伝メールを送信することができるというのがこのオプトイン方式です。相手の同意なしに広告宣伝メールを送ることは違反となります。

オプトインを得る方法としては、問い合わせや資料請求フォームのなかで「当社から製品情報などの案内を送ってもよろしいでしょうか」としてチェックボックスにチェックをしてもらう方法があります。もしくは、個人情報の取り扱いにチェックをしてもらい、個人情報の取り扱いのページで利用目的として「当社からの情報提供(広告)」と記載するという方法もあります。いずれにしてもチェックをするという能動的なアクションが必要です(ガイドラインでは「デフォルトオン」でも可となっていますが、その場合にはわかりやすく表示することが求められています)。

同意を証する記録の保存について

オプトインを得て広告宣伝メールを送るときには、同意の記録を保存しておく必要があります。問い合わせフォームで「同意する」にチェックを付けてもらったときでも、管理者宛のメールの本文にそれが記載されていることが望ましいでしょう。よくフォームのボタンに「同意して送信する」と書かれていて、同意しないと送信できない仕組みになっている場合は記録としては残りません。また広告宣伝メールを送信してから1ヶ月間はその記録を保存しておかなければいけません。

オプトイン方式の例外

オプトイン方式には例外が認められており、同意なしに広告宣伝メールを送ることができる場合があります。

  • 取引関係にある者に送信する場合(※1)
  • 名刺などの書面により自己の電子メールアドレスを通知した者に対して送信する場合(※1)
  • 自己の電子メールアドレスを通知した者に対して、以下の広告宣伝メールを送る場合
    • 同意の確認をするための電子メール
    • 契約や取引の履行に関する事項を通知する電子メールであって、付随的に広告宣伝が行われているもの
    • フリーメールサービスを用いた電子メールであって、付随的に広告宣伝が行われているもの
  • 自己の電子メールアドレスをインターネットで公表している者(個人の場合は、営業を営む場合の個人に限る。)に送信する場合(※2)

※1 送信される電子メールが通信販売などの電子メール広告の場合には、特定商取引法が適用されるため、請求・承諾なしに送信することはできません。
※2 自己の電子メールアドレスの公表と併せて、広告宣伝メールの送信をしないように求める旨が公表されている場合は、同意なく送信することはできません。

引用元:総務省・消費者庁「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント」

ここで押さえたいのは、「すでに取引がある既存顧客」や「名刺交換をした相手」、そして企業がWebサイトに掲載している代表メールについては、オプトインが不要ということです。ビジネスの現場でアドレスを公開しているのだから、広告宣伝メールは覚悟の上(ガイドラインでは「予測可能性」と表現)と解釈されるわけです。

ただし、Webサイト上に広告宣伝のメールはお断りのような表記がある場合には、オプトインが必要となります。逆にいえば、企業側として広告宣伝メールを拒否したい場合には、メールアドレスのところにそのように書くことで、広告宣伝メールを抑止する効果が見込めるということです。

また、注釈に書かれていますが、送る内容が通信販売の場合には特定商取引法が適用されるため、例外とはなりません。

表示義務について

広告宣伝メールの送信にあたっては、メールの本文に表示しなければいけない事項が決められています。

  • 送信者情報
  • 送信者の氏名または名称
  • 受信拒否の通知ができることとその手段
  • 送信者の連絡先(苦情や取り合わせの窓口)

この表示義務のなかにある「受信拒否」がこれから説明するオプトアウトになります。

受信拒否(オプトアウト)について

広告宣伝メールの送信について同意(オプトイン)された場合であっても、受信拒否(オプトアウト)の通知を受けた場合には、以後の送信が禁止されます。メルマガであれば一般的な方法はURLをクリックし、移動した先で受信拒否のボタンを押すようなものですが、受信拒否の通知を受けるための連絡先に自己のメールアドレスと受信を拒否する旨を伝える方法でも構いません。また、これについては同意のときと同じように記録を保存しておく必要があります。

受信拒否がされた場合でも、その相手がもともとの取引相手であれば、広告宣伝を目的としたものでなければ、以後もメールを送ることができます。

おわりに

メールマーケティングは古くて新しいマーケティング手法です。これからインサイドセールスとして取り組もうという企業も多いと思いますが、迷惑メールにならないように気をつけたいですよね。わたしたちはメールマーケティングの支援も行っていますので、お気軽にご相談ください。

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