BtoB企業はSNSマーケティングできるのか

SNSマーケティングとは

SNSマーケティングとはSNSを活用したマーケティング活動です。効果としては企業や商品・サービスの認知度アップファンの獲得顧客ロイヤリティの向上情報発信などがあります。マーケティングとは売れる仕組みを作ることなので、ようするにSNSを運用することで商品・サービスが売れるようにするのがSNSマーケティングだといえるでしょう。

「うちの会社でもSNSをやろうということになったのですが、なにをすればいいですか」という相談をよく受けます。たしかに最近では多くの企業がSNSの運用をしています。ですが、これ意味ある?と思うことも多々あります。とくにBtoB企業においてです。正直言って私は答えを見つけられていません。BtoB企業でSNSマーケティングはできるのでしょうか

BtoB企業はSNSマーケティングできるのか

消費者に直接商品・サービスを買ってもらうBtoC企業であればわかります。新商品の情報をInstagramでアップしたり、中の人がTwitterでちょっと笑える投稿をしたり、TikTokでダンス動画をアップしてみたり、やることはいろいろあります。これが有効なのは、SNSのユーザー=消費者(Consumer)だからです。しかしBtoB企業の顧客は企業(Business)です。BとBの関係において、SNSのユーザーはいないのです。

いやいやそんなことないよという反論は予想できます。企業といっても中にいるのは人。企業が相手とはいっても意思決定するのは人だというのは理解できます。また、採用では使えるという意見もあるでしょう。私もこれまではその提案をしてきました。マーケティングでは使いにくいですが、採用では使えますよと。でも使いたいのはマーケティングなのです。

とりあえず考えられる施策を挙げてみます。

考えられる施策

SNS広告を打つ

FacebookとInstagramでターゲティングを工夫して販売促進することはできるかもしれません。考えてみましょう。たとえば建材メーカーが工務店やハウスメーカーの人に向けて広告を出すとして、エリアは営業範囲にして、年齢を30〜50とかにして、興味関心で「ビジネス・業界」カテゴリーを「建築」にするくらいでしょうか。これでも広告が表示されるのはほとんどが関係のない人でしょうけど、100人に1人でも興味をもってくれる人がいればいいと割り切れるのであればいいかもしれません。とはいえ、やりたいことはきっと広告ではないんですよね。

採用活動として大学生にリーチさせる

実際BtoB企業でSNSを使っているところはこの使い方がいちばん多いのではないでしょうか。社員や仕事風景を出して、楽しい職場だということをアピールする。ナシではないとは思うのですが、効果的だとは思えません。そもそもSNSというのは、それなりに時間をかけてエンゲージメントを高めるものではないでしょうか。就職活動をする大学生はかぎられた時間のなかで業界研究や企業研究を行います。TwitterやInstagramをフォローして、何ヶ月もかけてその会社の雰囲気を知ろうという学生はいないでしょう。就活は短期決戦なので、リクルート目的であれば採用サイトに情報を出したほうがより効果的だと考えられます。

業界で注目される

同業に向けてノウハウや新しい情報を提供するというのもありそうです。たとえば印刷会社であれば、海外で注目されている印刷技術や、新しい機械の情報、ソフトウェアのTipsなどを発信することで、業界でオピニオンリーダー的な存在になることはできるかもしれません。そうなれば同業から仕事が回ってくるというのはありそうです。課題としては、投稿のクオリティ品質を高く維持しつづけることです。軽いノリではできないでしょう。

炎上させて知名度をアップさせる

炎上というとあれですが、TwitterやTikTokなどでなんらかの話題となり、世間での知名度を上げるということはあるかもしれません。ただそれでバズったからといって、すぐに仕事に結びつくことは難しいような気がします。定期的に注目されればいいかもしれませんが、それこそ炎上ネタでもやらないかぎり難しいでしょう。結果的に信用を落とす危険性もあります。

顧客に新しい情報を提供する

すでに顧客になっているユーザーにフォローしてもらい、新しい製品・サービスの情報を提供するやりかたです。これができるのはそれなりに顧客が多い企業にかぎられるかもしれません。たとえばグループウェアの会社であれば、追加された新機能の紹介や、便利な使い方の紹介をすることで、顧客からは喜ばれるでしょう。Webサイトでいくら情報を発信しても、既存ユーザーが定期的にチェックするようなことはしません。SNSであればフォローしていれば勝手に情報が送られてくるので、使い方としては理にかなっています。これはやるべきことだとは思いますが、SNSマーケティングとしての面白みには欠けます。

企業の活用事例

BtoB企業の活用事例を探してみました。大企業は除いています。大企業の場合はSNSでマーケティングしてやろうという感じではなく、

Facebook

Facebookを活用している企業をピックアップしました。探し方が悪いのか、これはと思えるFacebookページをあまり見つけることができませんでした。ほとんどの会社は自社のニュースやイベント情報、実績や事例を出していて、使い方はとしてはマーケティングというより情報発信です。

大阪にあるばねのメーカーです。ばねの製造工程を動画で紹介するのがメインコンテンツのようです。誰をターゲットにしたものなのかはよくわかりませんが、金属がくねくれと加工される動画はとても興味深く、真剣に見てしまいました。この規模の製造業の会社でフォロワーが4千人もいるのはすごいことだと思います。

日の出工芸株式会社

フォロワー数:約6百人

北海道にある建材や装飾材の加工会社です。納入事例がメインコンテンツで、イベント情報などもアップされています。会社の紹介文には「NCルーターの切削加工による不燃デザインパネルやLEDサインの製作」とか書いてあるので技術屋さんかと思ったのですが、事例をみるとデザインがとても高く、面白かったです。ターゲットはハウスメーカーや設計事務所なのでしょうか。取引会社であれば気になる情報を発信しています。

Instagram

Instagramは企業SNSを立ち上げたいというときにいちばんはじめやすいのではないでしょうか。FacebookやTwitterだと文章を書かなければいけませんが、Instagramは写真だけでも成立します。しかしマーケティングという観点でみると、もっとも難しいように思えます。今回たくさんのBtoB企業のアカウントを見ましたが、ほとんどが失敗しています。フォロワー数がそこそこ多いところでも、みると相互フォローだったり。人気があるのはやはり映える写真なので、金属フェチが喜びそうな金属加工メーカーとか、そういう会社は活用しやすいようです。ただマーケティングになっているかどうかは疑問ですが。

ヒルトップ株式会社

フォロワー数:約2千人

京都にある金属加工メーカーです。たぶんゴリゴリの金属加工メーカーなのですが、Instagramでは映えるオブジェ的なものをアップしています。これはうまいやりかただと感じました。ようするにBtoB企業なんだけど、SNSではBtoCを意識するというやりかたです。これでフォロワーを増やすなかで、本来のターゲットにもリーチさせようという戦略なのでしょう。

株式会社富士産業

フォロワー数:約7百人

東京の金属加工メーカーです。ここもいっけんするとBtoCの会社かなと思いますが、Webサイトをみると町工場です。フォロワー数はそれほど多くありませんが、相互フォローをしていないので、けっこうすごい数だと思います。造形美がいいんでしょうね。

ケイ・エイチ工業株式会社

フォロワー数:約8百人

大阪にあるプラントメーカーです。工場内の写真だったり溶接などの作業を動画で投稿しています。あまり相互フォローはしていないのですが、多くのユーザーにフォローされています。溶接の動画がいいのでしょうか。ちょっとよくわかりませんが、ファンがいるのでしょう。

Twitter

企業でSNSアカウントで担当者が「中の人」として注目されたのはTwitterです。たとえばシャープキングジムなどが有名ですが、人気のあるアカウントを見てみても、すべてBtoC企業です。やはりBtoB企業では難しいのでしょうか。Twitterでは他のSNSとはちがって、社長が個人名で発信しつつ、仕事のネットワークを築いていくという使い方もされています。

木村鋳造所

フォロワー数:約4.7万人

静岡県にある鋳物メーカーです。鋳物の製造現場を動画で紹介したり、社内の日常的な風景や雑談もあります。他のアカウントとの交流や、はやりのハッシュタグに便乗したり、とてもうまくTwitterを使っている印象です。この業種でフォロワー数4万人超えは驚異的です。

株式会社石井マーク

フォロワー数:約4.2万人

大阪にある標識・銘板の制作会社です。イラストを使ったちょっと笑える系の投稿がメインですが、リツイートが多いのが特徴的です。たんに面白いツイートを見つけてリツイートするだけであればフォローは増えないでしょうから、リツイートがうまいのでしょう。4万人以上もフォロワーがいれば本業でも問い合わせなどがあるのでしょう。

コベルコ建機

フォロワー数:約1万人

千葉県にある建設機械メーカーです。コベルコ建機はSNSにかぎらずブランディングがしっかりしている会社で、以前から注目しています。Twitterでも機械のTips的なものがあったり、採用のために社員の紹介があったり、ほのぼのする投稿もあったり、硬軟併せもつ投稿をしています。

TikTok

TikTokもBtoCであれば使い方はいろいろありますが、BtoBだとやはり難しいですね。あー、TikTokでよくあるやつね、という使い方が目立ちました。

マツヤ産業株式会社

フォロワー数:約6百人

大阪にある高圧ガス・配管の販売と配管製品の加工をしている会社です。Webサイトをみるとまじめな会社なのですが、TikTokではダンスやあるあるなどくだけたネタ投稿がメインです。ここらへんは大阪のノリなのでしょうか。採用を意識した運用になっています。

株式会社アイドットコム

フォロワー数:約9百人

岡山にあるOA機器販売の会社です。Webサイトを見ていただくとわかるのですが、けっこうはっちゃけた会社で、こういう雰囲気が好きな企業の担当者には好かれるのでしょう。敬遠する人もいるでしょうが、それでいいのでしょう。おれたちはこういう会社だ!問い合わせてこい!という突き抜けた感があります。

おわりに

で、結局、BtoB企業はSNSマーケティングできるのか

BtoB企業でもSNSを活用してマーケティングができるのかといろいろみてきましたが、やっぱり難しそうというのが現時点の結論です。しかしながら、きっといろんな企業が試行錯誤をしている段階で、そのうち成功事例で出てくるのではないでしょうか。すでにこの会社で成功しているよ!というのがあれば教えてほしいです(切実)。これからも引き続きBtoB企業のSNSマーケティングを考えていきたいと思います。

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