BtoBマーケティングの導入と課題
「BtoBマーケティング」という言葉をよく聞くようになりました。「マーケティング」ではなく「BtoBマーケティング」とあえていうかというと、もともとマーケティングというのは「BtoB」ではなく「BtoC」で使われていたからです。とくに日本では「BtoB」において営業担当者が仕事を取ってくるスタイルがほとんどで、いわゆるマーケティングは行われていませんでした。そんななかでマーケティングを取り入れるということは、受注のスタイルを変えるということです。「BtoBマーケティング」というのは、営業変革の話だといえます。
Contents
BtoBマーケティングの必要性
マーケティングとは
まずはマーケティングについて見ていきましょう。日本マーケティング協会によるマーケティングの定義は下記のものです。
マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。
引用元:日本マーケティング協会
他の定義としては、ピーター・ドラッカーは「マーケティングの目的は、販売を不必要にすることだ。マーケティングの目的は、顧客について十分に理解し、顧客に合った製品やサービスが自然に売れるようにすることなのだ」といい、フィリップ・コトラーは「マーケティングとは、標的市場を選択し、優れた価値の創造、伝達、提供を通じて、顧客を獲得、維持、育成する技術である」といい、「マーケティングと販売は、ほとんど正反対とも言える活動だ」ともいっています。わかりやすくいうと「マーケティングとは売れる仕組みをつくること」です。
BtoBでの従来の営業スタイル
業界によってスタイルは異なるでしょうが、新規受注のために営業担当者が飛び込み営業や電話営業を行い、アポが取れれば提案のプレゼンテーションを行い、受注できれば契約や納品を行い、納品後にはアフターフォローを行い――と、営業活動として多くの役割が与えられ、そのため営業マンと顧客とパーソナルな結びつきが強まるというメリットがある反面で、営業活動が属人化してしまうというデメリットもありました。
営業スタイルの変革が求められている理由
従来の営業担当者があれもこれも行う営業スタイルの変革が求められている理由としては、収益性の低下、生産年齢人口の減少、グローバル化、働き方改革、コロナ禍などが挙げられます。従来の営業スタイルでは営業担当者の負担が大きく、現代の働き方にマッチせず、人口減少もあって営業マンが減ってきたという国内の事情と、グローバル化という世界の流れと、コロナ禍という偶然が重なってしまったことで、営業変革が急務となったわけです。
BtoBマーケティング導入の本質
どのように営業スタイルが変わるのか
BtoBマーケティングとはWeb広告の実施やWebサイトのリニューアル、MAツールの導入など、IT化やDX(デジタルトランスフォーメーション)などデジタル改革だと思われています。これは間違いではないのですが、日本のBtoB企業にとってBtoBマーケティング導入の本質は、営業を分業体制にすることなのです。
どこで分業するのかというと、見込み客を見つけてくるのがマーケティング部門、その見込み客と商談を行うのが営業部門になります。BtoBマーケティングを導入するというと、従来の営業にプラスしてマーケティングを行うようにイメージされますが、営業の役割が変わることが重要なのです。また、これまで属人化していた営業活動を分担することになるので、情報共有も重要なポイントとなります。個人戦から団体戦になるといってもいいかもしれません。
BtoBマーケティングの手法
営業活動を分業するといっても、たんに手分けするだけではありません。従来の営業では見込み客を見つけるために顧客訪問を行っていました。買ってくれそうな会社をリストアップし、飛び込みをしたり電話をかけたりしてアポイントメントを取り付け、商談では自社の紹介、商品・サービスの情報提供を行い、興味を持ってもらえれば具体的な商談に進み、ダメなら別の会社に行く、というまさに足で稼ぐ営業スタイルでした。このような営業スタイルを「アウトバウンド(プッシュ)型」といいます。BtoBマーケティングはこれに対して「インバウンド型(プル)」といいます。槍を持って狩りに行くのがアウトバウンドで、罠を仕掛けて待つのがインバウンドだとイメージするとわかりやすいでしょう。
インバウンド型の営業ではWebを活用して見込み客を見つけます。そのためこれをWebマーケティングともいいます。具体的な方法としては、マーケティングのためのサービスサイトを立ち上げ、そこでコラムなどのコンテンツを掲載し、検索エンジンからの集客を行います。これと合わせてWeb広告やSNSなどでも集客を行います。そのようにして集めたユーザー(潜在顧客)の情報(会社名、名前、メールアドレス)を獲得するために、無料でダウンロードできる資料(ホワイトペーパー)を用意したり、オンラインセミナーを開催したりします。ここで集めた個人情報を「リード」といいます。つぎにその集めたリードに対して、メールを活用してさらなる情報提供を行い、購買意欲を高めます。これを「リードナーチャリング」といいます。購買意欲がじゅうぶんに高まったリード(ホットリード)を見込み客として、セールスにパスをします。ここまでがマーケティング部門の役割です。
BtoBマーケティング導入の課題
BtoBマーケティング導入のポイント
BtoBマーケティングを導入する、すなわち営業をマーケティング部門と営業部門とで分業するときのポイントがいくつかあります。顧客情報の共有、組織変更、マーケティング部門と営業部門との連携、ITツールの導入の3つです。そしてこれができるかどうかでBtoBマーケティングを導入できるかどうかが決まります。
顧客情報の共有
従来の営業スタイルでは営業マンが顧客情報を抱え込み、それが属人化というデメリットになると書きました。分業を行うためには顧客情報を共有する必要があります。顧客情報というのは、名刺と商談履歴です。名刺情報を共有するためにはSansanなどのシステムを使うと便利ですが、Excelで管理してもいいですし、紙の名刺をインデックスの付いたファイルボックスのようなもので管理してもいいでしょう。やりかたはともかく、顧客情報を会社の情報として管理するという意識が重要です。
マーケティング部門と営業部門との連携
従来型のBtoB企業ではマーケティング部門がないところが多いので、部門を作る必要があります。営業部門のなかでマーケティングを行うチームを作るのでもいいのですが、片手間にやるのでは失敗します。ちゃんとした組織としてマーケティング部門を作る必要があります。そしてこの新設したマーケティング部門と営業部門とが連携することが重要です。セクショナリズムによって「分業」が「分断」になってしまうことは避けなければいけません。
ITツールの導入
顧客情報や商談履歴のデータベース化、メールを送るためのMAツール、オンラインミーティングを行うためのWeb会議ツール、社内コミュニケーションのためのチャットツールなど、BtoBマーケティングを行うためにはさまざまなITツールを導入する必要があります。社内にこのようなITに詳しい人材がいない場合には、各都道府県にそういう支援をしてくれる団体があるので、ITコーディネーターやITアドバイザーのような人に相談するといいでしょう。
最大の壁は社内の抵抗勢力
と、ここまでBtoBマーケティング導入について書いてきましたが、導入にあたってもっとも大きな課題、最大の壁となるのは社内の抵抗勢力です。これまでの営業スタイルを築き上げてきた経営者のなかには、新しいスタイルを受け入れられない人も多くいるでしょう。インターネットなんかでモノが売れるか!マーケティングなんて営業マンが楽をしたいだけだろう!という反応をするかもしれません。また、経営者が理解をしてくれても、営業部門が反対することもあります。これまで自分の資産のように管理していた情報をオープンにしてしまうことの抵抗はけっこうあります。まずは経営者が必要性を理解し、トップダウンで進めるしかないでしょう。
BtoBマーケティング導入の方法
BtoBマーケティングで最初にやるべきこと
BtoBマーケティングをはじめるにあたってやるべきことはたくさんあります。サービスサイトを立ち上げて待っていてもユーザーは集まってこないので、まずは自社の強みや競合との差別化ポイントを見直し(戦略設計)、それにあわせてサービスサイトを立ち上げ(Webサイト制作)、コンテンツと広告で集客し(キーワード集客とWeb広告)、メルマガを送り(リードナーチャリング)、商談を獲得し(セールスパス)、クロージングを行う(成約)。顧客の状態をステップアップさせて成約につなげるための流れを決めてから、具体的な施策を行うようにしましょう。全体的な流れがないまま個別の施策を行ってもうまくはいきません。
おわりに
BtoBマーケティングの必要性は今後ますます高まっていくでしょう。営業効率の向上や売上アップだけではなく、人材不足の観点からも、早めに導入の検討を行うことをおすすめします。
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